マインドコントロール

マインドコントロールは、強制によらず、さも自分の意思で選択したかのように、あらかじめ決められた結論へと誘導する技術、またその行為のこと。


「マインドコントロール」に利用される人間心理


マインドコントロールは、人間の誰でもが持つ心理に働きかける。西田公昭によれば、この人間心理を利用して勧誘対象者を一定の結論に誘導することが「マインドコントロール」である。通常の商業活動にも一時的な効果として用いられているが、特にキャッチセールスなどでは経験則によって培われた様々な心理誘導テクニックによって高額商品が販売される。悪徳商法に限らず、カルトや自己啓発グループといった団体においても同種の手法を導入しており、マニュアル化されている場合もある。これらは一般の物販とは異なり、被害者やその家族を巻き込んで、人生を通じた被害をもたらすケースがある。

好意の返報性
人から好意を受けると、その好意に応えたくなる心理のこと。この心理を利用して、勧誘側から讃美の言葉や手書きの手紙などによって、被勧誘者へ向けて好意が繰り返し示される(「この乱れた風潮の中で人生を真剣に考えているなんて、すごい! 貴方は素晴らしいです!」など)。

ローボール(低い球)
いきなり「○○会に入りませんか?」「××が教祖です」と言われても、一般に人は心理的抵抗を感じるが、「お時間あります?」「手相の勉強をしています」「ちょっとだけ時間ください、ここでいいですから」「お金はかかりません」「そこの喫茶店で30分だけ話を聞いてください」「やってみなければ、わからない」という誘い方をされると、心理的抵抗感が薄れやすくなる。このような心理を利用した勧誘テクニックのことを、まず受け取りやすい低いボールを投げることからローボールテクニックと呼ぶ。投げられるボールは適当な期間を置いて、少しずつ高くなっていく。最初は無料チケットで絵画展やコンサートに誘い、次の誘いに応えやすい心理が作り出される(団体への勧誘する目的などは、当初、意図的に伏せられる場合が多い)。

権威性
著名人との関係を強調されることで、人間は心理的に人や団体を信用しやすくなる。団体の代表とその著名人との接触が、たとえ過去の数時間であったとしても、その対談・握手写真などが、その後、長期間にわたり被勧誘者や支持者に対して繰り返し利用されることがある(例:「ゴルバチョフと○○」)。また、その団体が関連性を隠して、別の団体名でイメージ戦略等で行っている社会的に受け入れられやすい活動(福祉活動、平和活動、家庭再建、青少年教育など)に賛同を示した著名人が、あたかもその団体の理念や活動に賛同しているかのように宣伝されることもある。また、著名芸能人がその団体のメンバーであることなども利用される(広告塔効果)。

希少性
「限定○○個!」「期間限定!」「あなただけにプレゼント!」「ここだけの話」など、数量や期間・対象を限られることによって惹きつけられる心理のこと。カルトなどの勧誘では「転換期って知っていますか?」、「今ならもっと偉い先生に見てもらえます!」、「貴方は選ばれた人なのです」といった言葉で希少性の心理に訴えかける。

コミットメント(関与)の一貫性
「つじつまの合う自分でいたい」という人間心理。日常的な場面では「せっかく名前や住所を書いて入会無料で作った会員カードなのだから、使ってみよう」と考えること。宗教の導入部分では「ここまで時間をかけて話を聞いてしまったのだから、試しにやってみよう」と思うこと。マインドコントロールの最終的な局面では、「ここまで、この教えで歩んで来たのだから、○○に参加しよう」「全身全霊をかけて信仰すると誓ったから、全財産を献金して献身生活に入ろう」など、「何のために今まで…」という考えかたにあらわれる。

知覚のコントラスト(対比)
心理的に対照的な刺激を受けると、人間の知覚や認識に対比効果が出ることを「知覚のコントラスト」という。「原爆展などの戦争写真展を見た後では、何気ない普段どおりの公園の風景でも光り輝いて見える」という心理のこと。日常的には「高級店で高価な値札を見た後で安価な店に立ち寄った際に、普段は手が出ない商品でも安く感じられる」という人間心理にあらわれる。一部宗教団体や思想団体での勧誘では、「戦争・飢え・差別・殺人・自殺・不倫・離婚」など、世の中の暗い面を過剰に強調した映画やビデオ等で被勧誘者に対して叩き込まれ、被勧誘者は一時的に絶望的な心理に追い込まれる。被勧誘者は、その暗く八方ふさがりな心理にある中で、明るい出口としてその団体の理想や行動が示されたり、その流れで教祖の名前や写真が明かされたりするため、それらが実際以上に光り輝いて見えてしまう。

恐怖心
一部の宗教団体では「脱会すると不幸になる」と教えられる。教義として教えられなくとも、脱会して不幸になった事例が、まことしやかに繰り返し示され、恐怖心が喚起される。「不幸になる」と言われる対象はその宗教によって異なり、「霊界の先祖」「本人」「親・兄弟・親戚」「子孫」など様々である。「教えを聞く前ならともかく、教えを知ってから脱会すると絶対に救われない」というレトリックも利用される。また、脱会の場合だけではなく、仮にその団体から一時的に距離を取りたいと申し出ても、「悪魔が入る」「地獄に行く」などと言われ、カルトによってその表現は様々であるものの、刷り込まれた恐怖心によって、団体から距離と時間を置くことが出来なくなる。


マインド・コントロールの手法


この技法は、ある特定の目的に向かうよう、そのように思い、考え、行動するべく誘導するものである。本来、自由であるべき個人の行動原則を誘導・操作するため、道義的な問題をはらむ部分があり、カルト宗教の問題とも関わって、これに対する批判が多々あるが、この技法を利用して社会規範意識の刷り込みによる犯罪者の矯正や、心理的に手を出してしまいやすい薬物依存に悩む人の意識改革を目指すグループも存在する。

泣き落とし
近年、振り込め詐欺などでも使われる人の情に付け入る手法である。宗教においては教祖がいかに苦難の道を歩んだか等が語られ、特にカルトの教祖は信者に向けて「さめざめと泣いてみせる」形の説教を行う。

グループ活動
グループによる勧誘活動や訪問販売活動を行わせる。それが頻繁かつ長時間であればあるほど「コミットメントの一貫性」(なんの為に今まで)の心理が働き、たとえ教義に疑問を持ったとしても信仰生活を無駄だったとは思えなくなりカルト生活を長引かせる。

しつけ的な手法(入信後)
マインドコントロールの手法として特に顕著なのは、さまざまな局面に対しての膨大な規則を与えて、それらに従うように仕向け、時にはその理由を知る事や考える事を禁止し、その通りに行動すれば非常に賞賛し、僅かでも外れれば厳しく罰して、次第にその規則に無意識に従うように「しつける(犬に芸を教えるように仕込む)」事である。
この「躾(しつけ)」が繰り返されると、常識や個人的価値観、果ては良心や善悪感までもが失われてしまうことがある。そのためコントロールされている者は非常識な振る舞いをしても、当の本人はそれに何の疑問も感じないことにもなる。ただし、怨念、依存、執着といった一般には歓迎されない感情・精神的状態を抑制するために、マインドコントロールが有効であるとの見解もある。

(参考)洗脳的手法
マインドコントロールをより効果的とするために、「孤独・極度の不眠や疲労・薬物・栄養失調等」によって、一時的な精神機能や思考能力の低下状態を引き起こさせ、その際にある特定の行動規範や思想を、文字通り「叩き込む」事も行われる。
さらに、それらの思想には、幾つかの条件付けを行い、繰り返し強化させる事で、当人の思想そのものになるようにしてしまうことがある。この結果としてマインドコントロールされている者は指示者のいいなりとなり、反社会的活動でさえも平然と行うことになる。
ある種の権威者とそれへの追随者との間にも同様な関係が見られる(教祖と信者など)。もちろん、これがコントロールされる者の利益となるのならば問題は少ないのだろうが、現実にはコントロールされる側の者が搾取され、経済的・社会的に被害を受ける者となっていることが多いところに大きな問題がある(カルト宗教の問題など)。


洗脳との相違


洗脳の場合は強制力を伴うのに対し、マインドコントロールの場合には明らかにそれと解る強制的な力を自覚する事が無いありふれた状況によって始まるのが普通である。また社会心理学的テクニックの要素が強い。習慣化・強化された偏った価値観等により、個人の考え方がカルト・セクト集団に取り込まれて大きく歪められてしまう。時間の経過と共にカルト・セクト集団の要求がエスカレートする為に徐々に個人にとって大きな被害に発展する。回復するためには早い段階での救出カウンセリング、自発的脱会後であれば早目の脱会カウンセリングなどが効果的である。

恐怖を利用したマインドコントロール


曲がった鉄は力ずくで元に戻すことは難しいが、
高熱で焼くと、柔らかくなり、形を戻しやすくなる。

これと同じで、人間も年を重ねる程、思考が固まって修正しにくくなるが
「恐怖」を与えると、精神がモロくなり、変化しやすくなる

恐怖のマインド・コントロールは、その犠牲者たちを強烈な心的外傷を受けさせることによって機能する。
それは、その心が解離し、そして複数の「別の」人格へとバラバラになることを引き起こす。
これらは、特定の任務を実行するように、個別にプログラムされる。
戦争、そして特に広島のような残虐行為は、地球規模での心的外傷となる出来事である。

人類は残忍に扱われた。一つの「解離」の状態で、人類は核による消滅を恐れ、
そして巨大な軍事支出と国連を受け入れるようにプログラムされた。」

ウィリアム・ジョーンズ 「なぜ広島は爆撃されたか」

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